2024年10月 - 鏡池でガレットを

鏡池に行った。 長野、戸隠、鏡池

戸隠という土地は天照大神が隠れた天岩戸を天手力雄命がブン投げて出来たと言われており、この鏡池は名の通り鏡のようにその地を映していた。

それぞれ由来が明確に残っていたり、その名が見た目に分かりやすく、地名に想いを馳せることは面白い。

今年は夏が長かったため山であっても紅葉が遅いが、秋晴れの空の青と色が変わり始めの緑のという色彩がよかった。

観光地ではあるものの(主要戸隠方面の駐車場はどこも満車であった)、鏡池は比較的人が少なく終始穏やかに見ていられた。静かで肌寒く、緑が多く空が広い場所に行ったのは久しぶりで、まるで心に何の悪いところもなくなったかのような錯覚を覚えるほど素直にいい場所だった。

革靴でいたのは我々だけで、みなそこそこ山用の装備をしていた。とはいえ真面目に山を散策するのでなければ不都合はないが、土がぬかるんでいる場合があることを承知しておいたほうがよい。いわんや山である。

 

ゆく道として計画していた道路が混雑緩和のため一方通行にしている、とのことで別の場所を示されたのだがそれが滅多に経験できぬような本当に細い山道で、誰もおらず、薄暗く、なるほど観光客には対向車と譲り合うことなど不可能の緊張感があった。

同行者が運転してくれたが「君が運転していたら不安に駆られ「この道はきっと違う、もう戻ろう」と弱音を吐いていただろう」という的確な指摘がありウケていた。ウケている場合ではないが(一本道ではあるが運転手もやや不安そうであったため助手席にいる私の責務は「大丈夫だよ!絶対着くって!ゆっくり行こ!」と応援することである)、私に対する評価は非常に正しい。加えて私の非力な軽自動車では勾配に難儀してより大騒ぎしていたことは想像に容易である。山道にはスマートな車体と泣き言を言わない圧倒的パワーすなわちデケぇエンジンが必要。

そしてその山道を登りたどり着いた先の駐車場で降りると空は澄み渡り、心地よい風が吹き、私のスマホは圏外であった。邪悪なインターネットからの解脱がある。

格安SIMだからかもしれない。

 

鏡池どんぐりハウスが目的地。私はガレットという食べ物が大好き。蕎麦も好き。

www.kagamiike.jp

奥を食事、手前をデザートのつもりで頼んだが、その手前のナツハゼを使ったジャムが美味で思わずうなる。ベリー種の酸味を残したまま、妙な甘さやもたつきのないさらっとした味わいで野趣ある……というと悪く聞こえる向きがあるかもしれないが、果実としてまっとうに美味い。

最近スーパー等で買う果物がどれも一様に甘くなってきており、種そのものが持っていた特徴が削られているような思いもあるからか尚うまく感じる。木苺ってのは酸っぱいもんで、山の食べ物には尖りがある。

 

私は同行者の食の好みが分からない(「山椒が効いていてうまい」「ガラムマサラが効いていてうまい」とかは言う)が、そういう人物が「これ美味しい」とずっと食べていたのでこの人にも好きな食べ物ってもんがあったんだなと感心し、「よかったね……」という思いで店頭で売っていたナツハゼのジャムを買ってあげた。

sato7280.net

もちろんメインで頼んだほうも美味しい。りんごチップで燻製した地鶏と信州サーモン、添えられたチーズが本当にうまい。チーズ本当に新鮮でおいしかった。フレッシュチーズの「フレッシュ」とはこれか、と味覚で知る。食べ進めると中央からご褒美のように半熟の目玉焼きが出てきて幸福度数が一切下がることがない。最初から最後まで全部うまいという、大変喜ばしい体験であった。

ガレットのいいところは具材一つずつ堪能してもうまく、いくつか重ねても間違いなくうまいところだ。具材の水分でもっちり感が増した生地も、端でカリカリに焼かれた生地のどちらも美味い。ガレットで外したことなし。理由は、いずれも美味しいためです。

ガレット、最高。